旅日記


2001年8月11日
トロント
晴れ

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Happy Birthday to me!
誕生日の夜に、俺は死んでしまうの?
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今日は写真無し。
緊急事態と認識した際、デジカメ持参する余裕はありませんでした。
俺は報道カメラマンにはなれないや。

 今日は、俺の28回目の誕生日。土曜なので、学校はお休みでした。

 特にお祝い会みたいのは無かったけど、まさみちと一緒にだいさくの家(ホームステイ先)へ遊びに行きました。大策の家のプールで泳ぎ、その後、大策の家のプール場(ビリヤード場)で、4〜5時間ビリヤードをやったかなぁ。大策が一番うまかったかな。帰りは大策の家のおかあちゃんが、パスタを作ってくれて、ご馳走になってから帰ってきたよ。

 いやいや、今日はいろんなことがありました。上に書いたとおり、遊びに言ったのはもちろんだけど、最大のイベントは、夜中の3時に起こりました。

 AM2時くらいに就寝して、1時間ほど過ぎた頃だったでしょうか。なんか、騒音がすごくて、起きました。

「ホワン、ホワン、ホワン、ホワン!」
「ウーー!」
「ウーー!」

2種類の音が同時に鳴っています。一方は、パトカーか救急車か消防車。もう一方は、これまでの28年間に、聞いたことがない音です。部屋にエアコンがない&今夜は熱帯夜ということで、暑さしのぎに、素っ裸で、窓を開けっ放しにして寝ていました。私の寝泊りしている部屋は12階なんで、安全面からも、窓開けっ放し平気なんです。

「なんだよ。こんな夜中に…。どうせ若い奴らが酒でも飲んで、いたずらで車のサイレンでも鳴らしているんだろう。うるせえなぁ!そこに警察のパトカーでも駆けつけたんかな?」

まぁ、このホテルに来てから、パトカーのサイレンや消防車の音などを聞かない日がなかったため(1時間に1回くらいは、けたたましいサイレン音を立てた緊急車両が、ホテル前の通りを過ぎる)、そんな感じに思っていました。5分間ほど耳をふさぎながら、再度寝ようと試みました。ですが、うるさすぎます。

「なんなんだよ! いつまでやってんだよ! がんばれよ!警察!」

ちょっと、覗いてやろうと思い、窓から、階下を覗いてみました。
すると、なんと! 道路には赤色のランプをつけた10台ほどの消防車と、百人以上(?)の人間が、こちらのほうを見つめていました。

「あれ!みんなこのホテルのほうを見てる!」

あせりました、このときは。本当に、めちゃめちゃあせりました。

「え!もしかしてこのホテルで火事発生? みんな逃げ終わって、残っているの俺だけか?」

寝ぼけ眼が、急にしゃきっとしました。

「やっべー!火事くせえよ。急いで逃げないと!」
「昨日(今日寝る前に)、28歳の誕生日を迎え、そして28歳の初めての夜に、俺は火事で死ぬのか?」

そんなことも考えました(0.5秒くらい)。こんなにあせったのは、生まれて初めてかもしれない!っていうくらいあせりました。

 とりあえず、パンツだけはいて、上半身は裸のまま、財布とパスポートが入ったバックを手にしました。とっさに思いついて、”口や鼻を煙から守るためのバスタオル”も手にしました(この間、10秒くらい)。

「あと、要るもんなかったけ? あっ、放水のせいで、パソコンが水浸しにまるかも! どうしよう! パソコン持っていこうか?、いや今はそんなことは言ってられない。早く逃げないと」

 再び窓から顔を出し、火元の階を確認します。が、炎は見えません。どっから逃げればいいのか分かりませんが、とりあえず、廊下出て、非常階段からだな。そんな風に考え、ドアをあけようとしました。しかし、映画とかでよくあるじゃないですか。こんな場面が…。”ドアをあけた瞬間、炎が部屋の中に「ボワー」って入ってきて…”。そんなことを思いながら、恐る恐るドアをあけてみました。すると、ホッ。炎は向かってきませんでした。廊下には、人っ子一人いません。「ウーー!」「ウーー!」という非常サイレンが、廊下天井のスピーカーから響くばかりでした。なにかが燃えたようなにおいも特に感じられなかったため、少し冷静になりました。パソコンなどを盗まれるとまずいんで、”かぎ”をかけて、部屋を後にしました。

「うん。火元はこの階じゃないな。さて、非常階段で逃げるにしても、上へいけばいいのか、下に行けばいいのか? まぁ、とりあえず非常階段まで行ってみよう」

 小走りで非常階段へ向かいました。階段へ向かうドアをあけると、そこは、階下に向かって小走りで逃げる人々で一杯でした。みんな上半身裸とかです。

「やっぱり”しゃれ”じゃなくて、本当の火事なんだ!」

私も皆の中に紛れ、1階まで小走りで階段を駆け下りました。そして、1階の非常口から道路にでました。道路は、数百の人間(ホテルの住人)でごった返し、非常口からは顔を青くした住人達が、まだまだ出てくるのでした。ですが、もう、ここまでくれば安心です。とりあえず、隣にいた西洋人からタバコもらい、それを吸いながら、彼に聞いてみました。

「Fire?」
「Yeah! 20階かなんかの部屋で、ベッドや衣類が燃えたらしい(英語がはやかったんで、よくわからん)」
「Finish?」
「I don't know.」

ってことでした。まぁ、自らの命の無事は確保できました。ホテルを見上げると、どこにも炎の姿は見えません。きっと、消火活動もすでに終わったのでしょう。1時間ほど経つと、消防隊が帰り、そして宿泊客も自分の部屋を目指し始めました。さらに20分ほどたってから、私も部屋に戻りました。

 部屋に戻ってからは、”興奮”と”自分のばかさ加減”のため、2時間くらい寝付けませんでした。本当に、自分の鈍感さが怖くなりました。

「なんで、俺、こうあほなんだ。「ウーー」を非常サイレンの音と気づかず、耳をふさいで再び寝ようとしていた俺って…」
「これが、大規模な火事だったら…」

 まぁ、俺も含め、死傷者とか出なくて良かったです。自分にとっては、いい訓練になりました。
更新地:トロント(カナダ)

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