旅日記


2001年11月25(日)
トロント
晴れ

-悲しみの二重奏-
今日は写真なし

 これまでの旅行中に、もっとも落ち込んだのは、この日だったかもしれません。

 明日帰国する龍太朗と昼飯を食った後、部屋で、一人だらっとしていると、誰かがノックします。ドアをあけてみると、大策とわかがいました。

「何してんの〜、いきなり遊びにくるなって!」
「いや、龍太朗、今日最後だから、龍太朗さよならパーティーでもやりたいなぁと思って」

 そんなことで、夕方から、俺の部屋でパーティーが始まりました。俺と龍太朗は同じアパート(家)に住んでいます。部屋はもちろん違いますが。なのに、なぜ、俺の部屋でパーティーかって?、俺にも良くわかりません。

 夜になると、龍太朗、俺、大策、わか、とも、かおり(以上、日本人)、ミー、ルイス(以上、韓国人)、しゅう(台湾人)の9人が、8畳ばかりの俺の部屋に集結しました。皆でビールを飲みながら、トランプをやっているときでした。なんと、一人の子がビールをこぼしたのです。机の上に載っていたビールは、床へと零れ落ちる前に、彼女の背中を直撃しました。彼女には、俺のTシャツを与え、また、床はすかさず拭いたため、こと無きをえました。その後もトランプを続け、午前2時くらいだったでしょうか。一応、パーティーはお開きとなりました。

 「いやー後片付けは大変だねー」なんて笑いながら、本日私の家に泊まる大策、わか、ともとビール瓶なんかをまとめていると、重大な事実に気付きました。

「あら、パソコンのキーボードが光っているなぁ。どうやらぬれてるいるみたいだぞ」

机の上のノートパソコン、私の愛器VAIO C1をまじまじと見て、愕然としました。俺の、俺の愛器に、ビールが、ビールがかかっている…。キーボード上のビールを拭き終わると、すかさず、電源を投入してみました。

「Sony」のロゴが出たあと、「ピピピ」っという音が出て…。

そのまま画面が固まってしまいました。なんど電源を入れなおしてみても同じです。頭が真っ白になりました。

「やっちまったー。俺のパソコンが、様々なメールが、多くの人々のメールアドレスが、デジカメ写真が…。やばい、やばすぎるぞ」

こっからは、もう抜け殻状態です。分解して中を拭こうと、ネジを外して…。ですが、キーボードの外し方が分かりません。Internetでも見ることが出来れば、分解方法も知ることが出来るのですが、今となっては、ネットもみれません。強引にキーボードを外そうと試みましたが、無理そうです。いろいろとドライバーでこじ開けている間に、俺の愛器は傷だらけになってしまいました。パソコンを裏向きにし、1〜2時間待ってみます。この間に、酔っ払っている大策、かな、ともは寝てしまいました。突然の衝撃アクシデントに自分を失った私は、酔いもすっかり抜け、ぼけーっとしていました。しばらくして、はたと思いつくと、再度電源を投入してみました。

「ピーピー」

先ほどと、音、画面表示は異なりますが、やはり起動しません。BIOSチェックでかたまります。

あぁ、どうやら、BIOSが死んでしまったみたいだ。マザーボード交換は間違いないか。修理に出しても、10万以上の出費だな。しかも、ここはカナダ。修理はどうすれば良いのだろう。泣きそうになりながら、そして、俺のベッドに寝ている大策、わか、ともを横目に試行錯誤していると、龍太朗の出発時間である、AM5時になりました。

 龍太朗の部屋に向かうと、彼は既に起床し、荷造り最終段階ってところでした。

「誰も起こさず、ひっそり出ようと思っていたのに…」と龍太朗。
「俺はパソコンの件で眠れなくて…、まぁ、もちろん、見送りする予定だったけれどね」と俺。
最寄り駅シェパードの途中まで、龍太朗と2人で歩きました。
「じゃぁね」なんて言いかけて…。
「元気でな。パスポートと、航空券持ったよな」なんて確認してみました。
「あれ、航空券が無いです。たぶん、ひろしさん(俺のこと)の部屋です」

かんべんしてくれよ。あほか。まぁ、今気づいてよかった。俺が走って、急いで部屋に戻ってみると、机の上に航空券はあったのでした。寝ている皆を起こさないようにしながら部屋を出て、再度地下鉄駅を目指しました。今度こそ、本当のおわかれです。握手をしながら、「がんばれよ」なんて言って、お別れしたのでした。やはり、涙がでました。別れは本当に寂しい。

 家に帰ると、一つの悲しみがふっと消え、頭に思い浮かぶのは、やはりパソコンのことでした。またもやいろいろ思案しているうち、AM7時となりました。大策、かな、ともが次々に起き出し、帰る準備を始めました。かなは、しきりに残念がり、私に文句をぶつけてきます。

「なんで、龍太朗が、出る時に、起こしてくれなかったの!」
「それが、龍太朗の希望だったから…、こっそり帰りたい気持ちは俺もわかるよ。別れは辛いし、また、照れくさいものだし。彼がそうしたかったんだから…」

 3人は、AM8時くらいに、帰っていきました。疲れていた私ですが、龍太朗との別れ、パソコンのことで気持ちが高ぶっていた私はやはり眠れません。壁をたたいたり、かなり、暴走気味でした。

 AM10時くらいだったでしょうか。一時帰国しようかな。でもお金いくらかかかるだろう。飛行機、新幹線、パソコン修理…。20万くらいか。保険は適用されるのか…、はぁ、どうしよう。そんなことを思いながら、眠りにつきました。
更新地:トロント(カナダ)

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