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雑記


2003年05月06日(火)
バルカラ
- 停電に思う -

 
 現在滞在中のインドケーララ州。この州では、毎晩、停電の時間帯があります。通常、20時30分から21時過ぎまでが、その時間です。

 当初は、パソコンの電源が突如落ちたり、真っ暗闇の中で暇を持て余してしまい、私にとって大迷惑の時間帯なのでした。しかし、「いつ停電するか?」、この時間帯が分かってくれば、これに対処出来るようになり、停電は何の問題でもなくなりました。最近では、この停電に慣れてしまい、「暗ければ暗いなりに、これを楽しもう!」といったふうに考えるようになりました。ある日はベッドの上で考え事、ある日はろうそくを前にして宿のインド人と語らい、そして、今日はビーチまで星を眺めに行ってきました。停電中だけあって、町全体から発せられる光がかなり少なく(発電機を回して商売を継続中の店もある)、三日月と星がとても綺麗に見えました。これに波の音がマッチして、本当にくつろげます。ビーチに寝転びながら星を見ていると、「何事にもあせることなんか無いし、ゆっくりと生きていこう!」、そんな風に、考え方もゆったりしてきます。

 さて、この停電、ビーチ沿いのレストランなんかでも、うまい具合にこの時間帯を利用しています。レストランの入口には、「20時半から21時の間は、キャンドルナイト」なる張り紙がありました。実際にレストランの前を通り過ぎると、テーブルごとに灯されたキャンドルが、非常にロマンチックな雰囲気を醸し出していました。これも俺と同じ考え方なのではないでしょうか。停電を何とか良い方向に利用してやろうとする店側の作戦なんでしょう。この作戦、なかなかうまくいっているのではないでしょうか。

 美しい星空を見ていて、日本にも、こんな時間があっていいんじゃないかなぁ。いや、日本のような国にこそ、こういった時間が必要なんじゃないかと思いました。面と向かってゆっくりと話す時間も無い家族、コミュニケーションの時間が不足しがちな父親とこども、ある家庭では、父親の仕事が原因としてそこにあったり、またある家庭では、テレビの存在が原因としてそこにあったり、さらにこどもの勉強が、その原因になっている場合もあるでしょう。皆が寝静まる前、20時とか21時といった時間に、こういった、電気の無い時間を楽しんでみるのはどうでしょう。国民全てが、一切の作業を休んで、暗闇を楽しむ時間。ろうそくの前で家族で何かを語り合っても良いでしょうし、星を眺めても良いでしょう。運良く、田舎の方に住んでいる人なんかは、テレビやステレオの、"雑音の無い世界"で、虫の声に耳を傾けるのも良いでしょう。都会だと、虫の数も少ないでしょうし、そうもいかないかもしれませんがね。今の日本には、こういった時間、機会、そんなものが極端に不足しているように感じます。このゆったりした時間を何に使っても良いのです。恋人同士が語らう時間、皆、時には、テレビやら新聞やら、鋭い明かりから離れて、真っ暗闇の中で、あるいはほんのりとしたろうそくの小さな明かりの中で、過ごすような時間も必要なんじゃないかと思います。付け加えるならば、少子化が進む日本をはじめ先進国においては、出生率を高めるためにも、有効な策なんじゃないかとも思うのです。

 1週間に1時間、いや1年に1日ばかり、そんな時間、もしくはそんな1日があっても良いと思います。一切の経済活動をストップして、自然やら、家族やら、恋人やら、電気の無い世界で、これらのものを大切にする時間。とても素敵だと思います。

 最後に。ただし、病院や警察、消防等の救急機関は動いていてもらわないと困るかも。電話も通じたほうが良いだろうし。電気を利用する医療器具を身に付けている人のことも考えないといけないですね。あと、時間帯、もしくは実施日を変える必要があるかな。真冬の北海道で、エアコン、電気コタツ、全て利用できない日があったりしたら困るでしょう。凍死する人が現れるかもしれません。
 
 最後に、もうひとつ。ぶっちゃけ、現在の日本で、こんなことを実現するなんて、ほぼ不可能なことだと思うけれども、時には電気や仕事や勉強や、そんなものと完全に離れて、素朴な時間を楽しもうやってことさ。だから、「こんなこと、電気消せばできる」とは少し違うのです。それじゃぁ、いつになっても、こんな時間を持とうとしないでしょ。多くの日本人は。寂しいけれどもさ。だから強制的に電気をカットして、楽しむ方向にもっていきたいのさ。皆、気持ち的に少し豊かになれるような気がするよ。

更新地 : Varkala ( India )