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雑記


2003年05月09日(金)
バルカラ
- インド、日本、逆がたくさん -

 
 部屋の天井で、扇風用のファンが終始同じリズムを刻んでいます。窓枠の隙間から生暖かい風が吹き込んでくるこの部屋で、じめじめとした、雨季の近い熱帯地方特有の空気をむなしくかき回しています。

 ファンを見上げ、その動きを注視していると、少し気分が悪くなります。なぜでしょう。そんなに大きな理由ではないのかもしれませんが、一つ、その理由として挙げられるのは、ファンが半時計回りに回転しているということではないでしょうか。

 インドは、かつてイギリスの植民地だった歴史もあるため、自動車、バイク、自転車、リクシャー、牛車、馬車…、およそ車輪の付いた乗り物は、左側を通行しています。日本人に馴染み深い、左曲がりは楽、右曲がりは要注意の世界です。

 しかしながら、ここインドには、日本と逆回転、反対方向に動作、そういったものがたくさんあります。

 まず、冒頭に書いたファン、日本では、扇風機、ファンの類は、基本的に時計回りだと認識しています。個人的にも、こちらのほうが快適に感じます。もちろん回転方向が違ったところでその性能に差が有るわけではないのでしょうが、気分的に、時計回りのほうが見ていて自然に感じられます。

 他にもたくさんあります。インドでは人間は左側通行です。なぜでしょう。車も人間も左側通行です。理由はわかりません。狭い路地を歩いている時などは、後方から来る車がとても気になることがあります。ちなみに、牛も左側通行しているような気がします。インドでは、蚊取り線香も逆巻きです。たとえば、日本を代表する蚊取り線香である「キンチョウ」のものは、内側から見ると左巻きになっています。つまり、燃焼する際には、右回り(時計回り)に燃焼していくことになります。これも見ていて気持ちの良いものです。しかし、インドを代表する蚊取り線香「Mortein」は内側から見て右巻きになっています。その燃えていく様は半時計回りになっていて、やはり個人的には、リラックスできません。ドアに目を移してみましょう。日本のマンションやアパートの玄関ドアを思い出してみてください。外から内に入る際、たいていの場合、ドアを手前に引くはずです。しかし、これがインドでは逆なのです。外から内に入る際、ドアを押すような形で室内に入ります。そこらじゅうのドアがこのタイプなのですが、特に狭いところに入る際、たとえば、駅のトイレや列車のトイレ等に入る際、ドアを閉める段になって、その作業が本当に大変なのです。ただでさえ、できれば壁になんか触れたくないインドのトイレ、この狭いスペースの中で、壁に触れずにドアを閉めるのは至難の業です。さらに、もう一つ付け加えましょう。これは左右が逆とか前後が逆とかそういったものではないのですが、ただ単に気づいただけのことです。インドらしい事象なので、書いておきます。インドでは無農薬野菜のほうが、農薬付け野菜よりも安く手に入ります。日本の常識で行くと、安いのは農薬を利用した野菜です。農薬を利用すれば、栽培にかける手間も少なくなりますし、高収量も期待できます。一方、無農薬もしくは有機農法といった手段を用いた野菜栽培では、そこに多くの手間がかかりますし、収量も少ないです。値段が高くなる理由も理解できます。ムンバイに滞在した際、スーパーにおかれた二種類のトマトを前にして、店員に尋ねてみました。
「この二つは何が違うのですか?」
店員の回答は次のようなものでした。
「綺麗にパック詰され、傷も無い、こちらのトマトは農薬を使用したもので、もう一方の、裸でおかれているトマトは農薬を使用していないものだ。農薬を使用したほうは、大きくて綺麗だし、味も良いから、値段が高いのだ」
おかしなものですね。日本とは全く逆です。ただ、日本では、農薬を使用していない野菜、果物においても、見た目の綺麗さ、つぶの大きさ、そして美味しさが求められます。このあたりも、日本で無農薬野菜が高額商品として流通している一因となっているのではないかと推測できます。翻って、インドにおいては、農薬も高額なものなのでしょう。したがって、農薬を使用した野菜のほうが、使用していないものよりも高額。これも理解できます。私ですか?もちろん、裸でおかれたほうを購入しました。ただ、インドにおいても、数十年も経てば、日本のような方向に変化していくのでしょうね。

 さて、インドと日本の逆をいくつか見てきましたが、左右の反対に関しては、インドでは左手、つまり左は不浄といった観念が関係しているのか、はたまた国民性なのか、そこに何らかの理由があるのか、理由は定かでありません。何らかの理由があると思うのですが、私には調べるパワーも時間もありません。ちなみに、ペットボトルのふたや水道等の蛇口に関しては、日本と同じです。左にまわせば栓が開き、右に回せば栓が閉じます。これは仕組みがネジ式のためでしょう。ネジは、右に回せばしまり、左に回せば緩む。これは世界共通のようです。

 国が変われば、いろんなものが変わる。注意していろいろなものを見てみると、身近なところにも、興味深いものがあくさんあるものですね。
 
更新地 : Varkala ( India )