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旅日記


2003年07月03日(木)
ルアンパバーン
晴れ
- 発砲騒ぎ -

 
 サバイディー。

 本日「ルアンパバーン」という、町自体が世界遺産に登録されているラオスの古都にやってきました。

 午前10時、国道13号線沿いのバス停へと向かいました。「10時以降、数台のバスが北のほうに向かって南からやってくるから、適当に手を上げれば、乗せてくれるよ」、そんな宿スタッフの言葉を信じて、買いたての水を抱え、向かったのでした。かつての米軍滑走路を横切り、13号線沿いに出ると、一台のマイクロバスが停車していました。どうやらビエンチャンから来たバスらしく、車内には20人ほどの現地人と、数人の西洋人の姿が見えました。バスの運転手の横に顔を出し、尋ねてみました。
「このバスはルアンパバーンに行きますか?」
「うん、行くよ。ルアンパバーン行きだ」
「いくらですか?」
「60,000Kipだ」
「高ーい!高ーいデス。この間乗ってきたバスは、この町からルアンパバーンまで50,000Kipだったデスよ」
「なぜなら、コレはVIPバスだからさ」
確かに、バスのフロント、そしてサイドに、申し訳なさげに、小さな"VIP"という文字のシールが貼ってあります。「う〜ん」と考え込んでいると、運転手が言いました。
「50,000Kipで良いよ」
「それじゃぁ、他と同じでしょ。45,000Kipにしてよ」
「いいから、いいから、早く乗れ」
「了解」
バスに乗り込むと、乗車率は約5割といったところでした。バックパックを最後部、他人のバックパックの上に載せ(こうしないと、場所が無い。早く乗った人は不運…)、俺は適当に、人のよさそうなおっちゃんの横に席を取りました。程なく、車掌がやってきました。
「お金」
「はい。45,000Kipね」
「は?15,000Kip足りないぞ。60,000Kipだ」
「違うんだって。運転手が45,000Kipで良いっていったからさぁ」
「だめだ」
「待ってよ。運転手に聞いてみてよ」
車掌は運転手のもとへ駆け寄り、一言二言交わすと、俺の元に戻ってきました。
「50,000Kipだ」
「45,000Kipじゃ無いの?」
「VIPバスだからだ」
「そうか、わかった。俺もVIPの一員だ。50,000Kip払ってやろうじゃないか」
「そうだ。今からおまえもVIPの仲間入りだ」
そうか。俺も今日からVIPか。明日、早速AMEXかダイナースクラブのゴールドカードでも作ることにしよう。俺様はVIPだからなぁ。

 10時20分、バスが発車しました。韓国製&かつて韓国で使用されていたバスらしく、車内にはハングルが氾濫していました。でも、このバス、乗り心地はなかなか良し。サスが固めで俺向きです。発車後、となりのおじいちゃんと20分ほど英語で会話。おじいちゃんはルアンパバーンの歴史やら見所を達者な英語で教えてくれました。その後は、いつものとおり、就寝。おやすみ〜。

 正午すぎだったでしょうか。バスが停車しました。どうやら、お昼ご飯休憩のようです。真っ先にバスを降り、白ごはんに、野菜の炒め物とタケノコの炒め物を載せてもらい、それをがつがつ食いました。スープまでついて、値段は4,000Kip。味良し、値段良し。この定食屋が宿の近くにあったならば、毎日食いに行くぜといったほどのお気に入りなのでした。飯の後は、何を差し置いてもタバコです。バスの横で、バスのタイヤを調査(メーカーやらサイズやら。いつも恒例なのだ)しながら、タバコを吸います。ですが、このタイヤが後にあんなことになるとは…。ところで、タバコを吸っていて、気になる人物を見つけました。彼は、身なりは普通のラオス人でしたが、他の人と一点違ったところがあったのです。なんと、彼の背中にはライフル銃が背負われていたのでした。少しぎょっとしながらも、彼を視界に入れて観察してみました。ぼろぼろの上着からすると、軍人ではないな。軍人なら、私服でも、もう少ししっかりした服を着るはずだ。ゲリラかなんかか?。しかし、地元民には、彼におびえた様子は無いし…。私にとっては、こういった人間を見るのは初めてのことでした。「警察官が銃を持っている」、「軍人が銃を携えている」、こんな光景は日本でも見られますし、世界中どこでも目に出来る光景です。「一般市民が銃を持っている」、そんな様子も見たことがあります(←思い出したくない、つらい経験…)。ですが、私服の人間が、人々の行き交う市場で堂々とライフル銃を抱えている、そんな光景を目にするのは初めてのことでした。「ここは中東か!」とちょっとした一人突っ込みをぼやきながら、バスに乗り込みました。

 皆、思い思いに休憩時間を過ごし、またバスが動き出しました。そしてこのとき、ライフル銃を持ったおにいちゃんも乗客の一人だったことに気がつきました。あぁ、そうか、きっと、彼は我々乗客の護衛を務めているんだな。車内には軍服を着た軍人さんも乗っていたので、彼の様子も眺めてみました。すると、彼も左腰に拳銃を携えていたのでした。「おぉ、この車内にはライフル一丁と拳銃一丁があるわけだな…」。この光景、"心強い"と喜んでよいものなのか、"もし彼らが偽護衛、偽軍人だったら…"、"もし彼らが突然発狂したら…"、"もし彼らが昨晩奥さんと喧嘩して、いらいらしていたなら…"などと、心配してよいものなのか。想像力豊かな私は、良からぬ妄想をいろいろと膨らませてしまうのでした。

 13時頃、これまで険しい山道を上り下りしていたのですが、少し開けた場所に出ました。どうやら、この近辺一帯の市場となっている場所なのでしょう。様々な民族衣装を着た人々が、露店にて果物やら野菜を売っていました。ここで、またもバスは停車し、ある者は買い物に、ある者は野外放尿に、またある者は喫煙にと、バスからはぞろぞろと人々が出て行ったのでした。多分にもれず、私も外に出て、おしっこ+たばこを満喫しました。ここで、またもやびっくり。今度は、ライフル銃の数にびっくりです。市場の横に、だらだら暇を持て余しているような男たちの集団があったのですが、彼らの肩には、またもライフル銃が。そして彼らの傍らにもライフル銃が…。10丁、20丁はあたりまえの世界です。
「あぁ、これじゃぁ、国中に銃が氾濫するわけだ…」
おそろしや、ラオス。ビエンチャンにいては、全く知ることの無かったラオス北部の世界。武装した山賊が出るというのも本当のことでしょう。ぼろをまとい、中国帽のようなものを被った彼らが、今は市場の護衛役なのかもしれませんが、いつ強盗に変身するやもわかりません。

 みたびバスに乗り込み、20分ほど走ったところでした。私の頭は、銃のことでいっぱい。バスが、故障して立ち往生した車(ぼろが多いので、故障者もたくさん)を時速4、5Kmで追い抜くたびに、軍人さんが拳銃に手を添える様子を私は注視していました。そんな時でした。
 「パーン!」
大きな音と共に、もうもうと車内に煙がたちこめました。もう私の頭の中は、銃、銃、銃…。猛獣、獣神ライガー、饅頭、じゅうはじゅうでも、下手をしたらやばいことになる、この"銃"のことで一杯でした。
「あわわ…、後ろのお兄ちゃんが発砲したか…」
「あやや…、山賊にバスが狙撃されたか…。だからVIPなんてシール貼るなっつーの。狙われるだけじゃん」
乗客全員の顔が凍りつきました。
「やばいことに巻き込まれたなぁ…。横っ飛びとかしたら弾丸ってよけ切れるものかなぁ。何とか山賊に反抗する手立ては無いものかなぁ。西洋人のお兄ちゃんと力を合わせて、なんとかならないものかなぁ…」
一瞬、そんなことも考えました。泣く泣く、USキャッシュやデジカメ、そしてパソコン等を持っていかれるのは、本当に勘弁なのです。こんなとき、人間って、なぜか冷静になれるものです。バスはよろよろと100mほど進むと、停車しました。
「なぜ停車するんだ!全速力で逃げれば良いじゃないの!」
後ろを見ると、皆顔面蒼白。ただし、西洋人はもともと白いので、蒼白なのかどうなのか、私にはわかりま…、なんて馬鹿馬鹿しいことを考える余裕もありませんでした。ライフル銃を背中に担いだ護衛担当が前に向かって歩いてきました。
「おっ、来たな来たな。これから、お決まりの『我々は何とか同盟だ。このバスはハイジャックされた』やら、『皆財布と荷物を置いて、外へ出ろ』あたりが始まるのかな」
そんなふうに思いました。ですが、実際は違いました。彼は運転手と二言三言交わした後、勇ましく、ライフル銃を抱えて車外に出て行きました。そのとき軍人さんはというと…、ぼけーっと呆けたような表情をしていました。「たのむぜ、タノムサク!」。いや違った。「たのむぜ、軍人さん!」。
そして数十秒もせず、彼は車内に戻ってきました。彼と運転手が、何事か会話しています。その会話を理解したバスの乗客たちは、安堵の表情とともに、笑顔さえ浮かべています。状況のつかめない俺は、未だに不安です。
「何故、皆笑っているんだ。山賊に狙撃されたんだぜ」(←俺の頭の中は、山賊で一杯…)
そして隣のおじいちゃんが英語で俺に教えてくれました。
「後輪の1本がこわれたみたいだ」
わっはっは。何の事は無い。どうやら、4本ある後輪の内の1本がバーストしただけのことらしいのです。
「いや、でもタイヤを狙って狙撃ってこともありえるぞ。そろそろずらずらっと山賊が現れるやも」
でも5分待っても、10分待っても、何も現れず。そして、程なくタイヤ交換作業が始まり、1時間もすると、バスはまたも無事に動きだしたのでした。

 いやいや、そんな冒険一杯のバスの旅も17時、無事に終了しました。でも、数日後にはルアンパバーンからヴィエンチャンに戻るから、またどきどきしないといけないんだ。はぁ…。

 中米、南米、中東、アフリカ、アジア。世界には未だ銃のあふれる国々がたくさんあります。言い古された感もある「銃の無い社会」やら「銃の無い世界」といった言葉、こんな社会や世界、未来があるはずも無いとわかっていながらも、「困ったものだ。なんとかならんかね」とつぶやいてしまうのでした。

 到着後、客引き(ホテルスタッフ)についていってチェックインした「MYSAY GUEST HOUSE」にてビールにて一人祝杯をあげ、市場でまたも野菜炒め載せごはんを食べ、20時頃就寝しました。
 

- 本日の出費 -

1kip(ラオスキープ)=\0.01
US$1=10,530kip

- 移動費 -

From : To : 手段 : 値段 : 所要時間 :
バン・ヴィエン ルアンパバーン バス 50,000Kip 7.5時間
 

- 飲食費 -

ファー * 1 (朝食) 5,000Kip
バナナシェイク * 1 (朝食) 1,000Kip
炒め物を載せたもち米 * 1 (昼食) 5,000Kip
ビール * 1 (夕食) 6,000Kip
炒め物を載せたもち米 * 1 (夕食) 5,000Kip
水 * 1 2,000Kip
 

- 雑費 -

ERA * 1 (たばこ) 20本入り 3,000Kip
ホテル代 20,000Kip

更新地 : Luang prabang ( Laos )

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