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旅日記


2003年10月02日(木)
台南
晴れ
- 日本を考える旅 -

 
 こんにちは。

 本日、台湾に入国しました。

 香港の九龍にある宿を出たのが、午前10時くらいのことでした。宿を出てネイザンロードを北に少しあるいた後、空港行きのバスが停車するバス停を発見し、10分後、何の問題も無くバスに乗り込みました。そして40分が経過すると、またも何の問題も無く空港に到着し、チェックインを終え、飛行機に乗り込み…。

 香港は「旅行する」という楽しみが全く感じられない場所でした。もちろん夜景は美しいですし、飯も美味い。昨晩の国慶節の花火も見事なものでした。ただ、香港では、何かに困っておろおろするようなことが一回もありませんでした。多くの「もの」、「こと」が機能的に出来上がってしまっていて、日本の都会を歩くのと全く違いがありません。そして仮に何かに困ったとしても、英語を話す人が周囲にたくさんいますので、困り事も即座に解決してしまいます。「少し困ったり、道に迷ったり、言葉が通じなかったり…」、そんな出来事があると無性にワクワクしてしまう俺です。そんな俺にとって、香港はエキサイティングで快適な街でしたが、俺の旅行にとって、そこは決して魅力的な場所では無かったのでした。

 15時30分、台北に程近い中正国際空港に到着しました。
「ニイハオ!」
笑顔で入国審査官にパスポートと入国カードを手渡しました。すると、審査官が私の記入した入国カードに目を通しながら、英語で尋ねてきました。
「滞在先の住所を記入していないけれども、どこに行きますか?」
「はぁ、今日台南に行って、2、3日後に高雄の友人に会い行き、それから東海岸の町を数箇所まわってから台北に戻ってくる予定です」
「台湾は初めてですか?」
「はい、そうです」
「どれくらい滞在する予定ですか?」
「ビザ無しだと2週間滞在可能と聞いていますので、期限一杯の2週間程度滞在したいと思います。少し急がないといけないと思いますが」
「わかりました。気をつけて(「気をつけて」だけ日本語!)」
「あやー、日本語ですね」
審査官の笑顔とともにパスポートが私の手に戻り、あっという間に入国審査が終了しました。審査ゲートを出ると、パスポートの入国スタンプを確認してみました。すると、
「あれれ…、ビザ無しだと2週間しか滞在できないはずなのに、なぜか俺のパスポートには30日間の滞在許可が記されているよ」
SARSがらみか何かの影響で日本人のビザ無し滞在可能期間が変更されたのか、はたまた俺の印象が良かったのか…。まぁ、いずれにしても「2週間は短い」と考えていたところでしたので、「しめしめ、ラッキー、ラッキー」と審査ブースを後にしました。

 荷物をピックアップしてから米ドルキャッシュ40ドルを両替し、空港の出口に向かう途中でした。「SARSに要注意!熱が出たらすぐ下の連絡先に!」なんていう紙を配っていた女性が私にも紙を手渡しました。漢字だらけの紙を見ながら、「うわ〜わかんね〜」と日本語で独り言を呟きました。すると、お姉さんが私に言葉を返しました。
「日本語もあるわよ」
「はっ、はい」
驚きの顔を上げお姉さんを見ると、笑顔で日本語バージョンの用紙を私に手渡すのでした。
「あやー、またもや日本語…」

 その後、空港内のツーリストインフォメーションで各種の資料等を入手し、空港目の前のバス停で一休みしました。
「むー、まずは台北市街へと向かうか、それとも他の町へと向かうかな。2、3日後には友人に会うために高雄に行かないといけないから、とりあえず、少し南に移動しておくか。台北にはいずれ戻ってくるから、台北観光は後回しにしよう…」
ここで、どの町を訪れるか迷いました。早速インフォメーションで貰った地図を開き、思案しました。台湾中部、南部で移動の拠点になるような町というと、台中、台南、高雄あたりでしょうか。そして、なぜかここで「台南」が気になりました。何故だろう。自分でも悩みました。程なく、思い出しました。そう、それはカナダのトロントに滞在していた頃でした。今回の旅行で訪ねる高雄に住むシュウ(当時はトロントに住んでいた)にしばしば飯を作ってもらっていた頃でした。やつがよく「台南肉乾?」という食材を、料理に利用していたからなのでした。「あー、あの台南肉乾のせいだ…。台南火鍋というのも食ったことがあるような気がするし…」
そんなしょうもない理由から、とりあえずの目的地を台南市に定めたのでした。

 目的地が台南市に決まったものの、そこへの行き方がわかりません。空港内のツーリストインフォメーションに戻り、服務員に英語で訪ねました。
「台南まで行きたいんですが、バスと列車のどちらが便利ですかねぇ」
「バスが安いし早いわ」
「バスは台北市内まで行かないと捕まえられませんか?」
「そこのバス停から台中までのバスが出ているから、それで台中まで行って、台南行きに乗り継ぐって方法が便利よ」
「費用はいくらくらいか分りますか?」
「少し待って」
若い服務員は受話器を片手にダイヤルし始めました。バス会社に聞いてくれているのでしょう。
「400NTD(1,500円くらい)よ」
「わかりました。ありがとう」
「どういたしまして」(←日本語)
「あやー、日本語が話せるのですか?だったら、なぜ最初から日本語で…。英語は面倒くさいです」(←英語で)
「知っているのは、挨拶くらいだから無理よ」(←英語で)
「ありがとう」(←日本語)
「どういたしまして」(←日本語)

 バス停に向かうと、「あそこのオフィスでバスチケットを買ってきてください」とのことで、オフィスに向かいました。そして20代のおねえさんに英語で話し掛けました。
「すみません。台南まで行きたいのですが」
「わかりました」
私がバス時刻等を確認しようと、さらに言葉を発しようとすると、彼女の隣にいた50歳すぎくらいのおばちゃん係員が私に話し掛けてきました。
「日本人でしょう?」
「はっ、はい。日本語お上手ですね」
「いえいえ。すぐ台南までいくのですか?」
「はい」
「400NTDで、出発時間は16時30分。バス乗り場はそこ。一番端のバスに乗ってください。あと台中での乗り換えだけれども、運転手に"ここ"で降ろしてくれるように、この紙を見せておいてください」
「はい」
「それと、すみません。あなたはどちらで日本語を勉強されたのですか?」
「私くらいの年齢の人間は日本語が話せますよ」
「しかし、ご高齢の方々しか話せないと聞いていたのですが」
「親から習ったのよ」
「そうだったのですか。それとなぜ私が日本人だってことがわかったのですか?」
「ここで英語を話すのは同じ顔の中では日本人だけだもの」
「そ、そうですね…」
「いってらっしゃい」
「ありがとうございます。行ってきます」
「昔と同じで若い日本人も礼儀正しいのよ!」ってなの姿をアピールしたくて、丁寧におじぎをして、その場を去りました。

 「同じ顔ねぇ…。確かにそうだ。中国人も香港人も北京語を話す。シンガポール人、フィリピン人は英語だが、顔が少し違う。韓国人もここでは英語だが、顔の違いがわかるのかなぁ。おもしろいや」
そんなことを思いながら、バス停まで行き、指定されたバスに乗り込みました。そして指示されたとおり、おばちゃんから貰った紙を運転手に手渡しました。

 非常に豪華なバス、「なんじゃぁこりゃぁ」っていうようなでかいソファ(シートじゃなくて、本当にソファ。見た目は、デパートの電気屋とかにあるマッサージ機のような感じ)が10個くらい設置された2階建てバスに乗り、20時、無事台南の中山公園近くに到着しました。ところで、このバス、本当に豪華でした。日本を含め、各国で通常40人乗りくらいにしてしまう大きさの車両には、なんと12ほどしか席がありません。ソファは電動リクライニングですし、テレビのリモコンが手元についています。リモコンが各席についているということは…。そうなんです、14インチのテレビが車内に10台くらい設置されていて、用意されている映画も3チャンネルほどあって、あるテレビではハリーポッター、あるテレビではジャッキーチェンが映っていたりします。「すげーすげー」と感動して、1人写真を撮りまくってしまいました。車内の人々はそんな俺を見て、「何をしているのか、こいつは」ってな感じ。後になって分ったことだけれども、台湾の長距離バスはこれが普通だそうな。

 さて、そしてバスを降りてから、歩くこと40分ほど、4Kmの道を歩き、台南市の総合福祉センター内にある宿泊施設にチェックインしました。そうそう、これも書かせて。市内にはラブホテルがたくさんあるのですが、相場は3時間の休憩で300NTDといったところ。一泊すると、1,000NTD以上もします。そのほか、もちろん旅行者用のホテルもあるのですが、どこも高額なのでした。そんなわけで、香港の宿にあった「地球の歩き方台湾編」からメモってきた、この宿泊施設にチェックインしたわけです。値段はドミで一泊275NTD(1,000円程度)。ここ、とてもお勧めです。物価の高い台湾にあってこの値段ということもあるのですが、今日はドミ宿泊者がいないため、4ベッドの広い部屋は俺1人のものです。台湾はもはや先進国なんで、もちろん西洋式トイレ、ホットシャワーを室内に完備しています。ついでに当たり前のように、俺の部屋を含め、館内全体がエアコンで温度調節されています。忘れないように、TVももちろんついています。税金も払っていないのに、市の運営するこんな宿に泊まっている俺って…。なんか申し訳ない気がしてきます。

 そんなこんなで、台湾訪問は生まれて初めてのことですが、なかなか興味深い場所のようです。というのも…、

・ 台湾は国なのか中国(中華人民共和国)の一省なのか…
・ なぜこんなにも日本語やら日本が浸透し、日本びいきの国なのか…(日本の植民地だったことを踏まえて。韓国とは少し違うでしょ)

 皆さん知っていますか? 台湾には国名があります。台湾は「中華民国(中華人民共和国ではない)」という名前を自ら名乗っています。台湾の人々が持つパスポートには、堂々と「中華民国」と明記されています。「えっ!台湾って台湾国って名前じゃなかったのか?」。そんな感想を漏らす人もいることでしょう。ところで、ここからは主観がバリバリ入るので、「へぇ〜」(なにやら、日本では「へぇ」がはやっているらしいねぇ)ってな感じで、一つの意見として読んでください。「中華民国」、日本ではTVで、新聞で、こんな国名を耳に、目にすることはあまりないはずです。日本政府は「中華民国なんて国は存在しない」というスタンスでしょうし、マスコミも使いたがらないことと思います。なぜならそこには「中国」の存在があるからです。中華民国と日本国の間には国交がありません。なぜなら、日本国にとって、「台湾」というものは国ではなく、中国の一地域にすぎないからです。アメリカや韓国にとっても同様です。ただ、世界各国の全てがそういった対応をしているかというと、少し違うようです。アフリカ、東欧、中南米諸国のいくつかは、台湾と正式な国交を持っています。しかし、台湾は国連にも加盟できず、世界の一般的な認識は、「台湾=中国の一地域」といったものでしょう。

 台湾は、日本による統治の時代があったにもかかわらず、大陸や韓国と少し状況が違い、知日、親日の人が多いことで知られています。李登輝元総統(本省人として初めて台湾総統になった人物)なんかは知日の人として日本でよく知られていますよね。彼は日本人として台北で生まれ、京都大学を卒業しています。知日ってあたりまえですね。"元日本人"ですものね。また、上に書いたように、たくさんの人が日本語を話します。日治時代(日帝統治時代)の遺物として覚えている老人もいるだろうし、バス切符売り場のおばちゃんのように両親から、また語学学校で勉強した人もいるでしょう。そして、ここ台南の町にも日本があふれていました。道路に日本車、日本製のバイク、上を見上げれば意味が理解できない日本語の看板、中国語の看板には("之"の変わりに使われる?)ひらがなの"の"の文字、セブンイレブンには弁当とおでん、レストランには「日式**」のメニュー、商品の広告には「日本的**」のコピー、商店街のスピーカーからは日本の歌、本当に数え切れないほどに日本があふれています。

 そんな環境に来て、2つ思ったことがありました。まず最初にこの町を歩いて胸に込み上げてきたものは、郷愁でした。ここ台南市は人口80万人を擁す台湾第4の町です。人口規模や町の寂れ具合も私の田舎である新潟県にある新潟市とそっくりなのです。商店街のアーケードを歩いているとき、ふと古町あたり(新潟市の昔の中心地。駅から遠いので現在は寂れ気味)を思い出してしまいました。「三越がある(台南にも三越がある)」、「歩行者が少ない」…、そんなところがそっくりです。
「あー、懐かしい。新潟とかわんないや。なんだか俺のたびも終わりだなぁ…」
そんなことを感じました。次に、これがまぁ、書きたかったことなのだけれども、なんだか「台湾に申し訳ないなぁ」って気持ちが胸に浮かびました。台湾については、以前から興味を抱いていたこともあって、数冊の本を読んでいたのでした。だから、こんなことを知識として持っています。いくつか書きましょう。

・日本の政治家達は、「中国共産党(大陸の政府)が怒り出すから…」と台湾のことは口にしない。(なにせ、中国にはいつも謝っていないといけないらしいからさぁ…)
・国立大学の教授(国家公務員)などは台湾を訪問することができない。政治的な意図を持たない学術交流等であっても、訪問できないそうだ
・日本人はビザ無しで台湾を訪問することができるのに、台湾人はビザが無いと日本に来れない。それも発給されないことがあるらしい。李登輝さんが病気療養か何かで日本を訪問しようとしたとき問題になったでしょう
・一部の新聞社を除いて、台湾のことを記事としてあげたがらないらしい。サンケイだったかな?を除くと、台北に支局すら置いていないそうな。おおくの新聞社は北京にある支局が心配で、台湾のことを記事にしたがらないそうだ。ほら、大陸に批判的な内容になれば、中国共産党が支局をぶっつぶすなんてこともありえるわけだから

上のようなこういった事情なんかを踏まえると、これだけ日本を追っかけて経済成長を達成し、日本文化になじみ、日本びいきの人々が住み、日本人に優しく接してくれる国民がいるこの国に対して、なにやら日本人として申し訳ない気分になってしまうのです。「今の日本の対応はあまりにひどいじゃないの!」って。

 そんでもって結論へ。今回の台湾の旅、一月ほどかけて台湾をぐるりと一周する予定です。金に余裕があれば、東海岸沿いの離党にも訪れてみたいと思います。かなり上のほうにも書いたように、2つのことを考えながら。そして過去の日本、現在の日本を探しながら。

・ 台湾は国なのか中国(中華人民共和国)の一省なのか…
・ なぜこんなにも日本語やら日本が浸透し、日本びいきの国なのか…

 一応お断りですが、私は中国(大陸)は結構気に入りました。もちろん政府のことが気に入ったわけではなく、そこに住む人々のことです。だから、大陸と台湾が喧嘩をするような事態は好みませんよ。あたりまえですが。でも正直に言うと、「台湾を応援したいなぁ」って気持ちがあることは確かです。

 本当に最後に。セブンイレブンで売っていた"国民弁当"なるものの中に、たくあんが入っていた…。国民弁当って名前、そしてそこにたくあんを入れるセンスに笑った。面白い国だ。

 またね。
 

- 本日の出費 -

1NTD=3.5円

- 移動費 -

From : To : 手段 : 値段 : 所要時間 :
香港の宿 香港チュクラプコップ国際空港 市バス
A21番
33HKD 40分
香港チュクラプコップ国際空港 台湾中正国際空港 飛行機
タイ国際航空 TG632 便
- 1.5時間
台湾中正国際空港 台南 高速バス
統聯汽車客運股フン(にんべん+分)有限公司
400NTD 5時間

- 飲食費 -

コーヒー * 1 (朝食) -
機内食のサンドウィッチ * 1 (昼食) -
コンビニ弁当 * 1 (夕食) 40NTD
ビール * 2 (夕食) 60NTD

- 雑費 -

中南海 Lights (たばこ) 中国でまとめ買いした -
宿代 275NTD

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