トップページ > 旅日記総合目次 > 世界一周旅行編目次 > アフリカ編 > 旅日記

旅日記


2002年12月31日(火)
カサブランカ
晴れ
- らしくない大晦日 -

 
 あぁ、今日は大晦日です。ということで、軽くこの1年の総括をしてみましょう。2002年は、俺の人生の中で忘れることの出来ない1年だったのではないでしょうか。こんな1年はもう経験することはないでしょう。この1年でいろいろな経験をしました。様々な土地に赴き、様々な人と語らい、毎日が苦労と喜びの連続だったような気がします。日本で普通に働いていたら、こんな経験はできなかたろうなぁ。毎日が同じような日々の連続で、たまに飲み会が会ってはめはずしたり、仕事でポカしたり…。あらためて、仕事をやめ、そして旅行に出て、様々な経験ができているなぁと感慨深くもなってしまいます。もちろん生活は安定していないし、金がないし、結婚も出来ないだろうし、プラスばかりでなくマイナスの部分も多いのですが…。でも良かった。旅行者になって。毎日、知らないことばかりで、勉強の繰り返しで、様々なものが新鮮で楽しいものね。

 さて、旅日記に進みましょう。大晦日だからって特に変わったことがあったわけではないのですが…。

 朝9時、ホテル清掃員のノックで、たたき起こされました。どうやら朝の9時がチェックアウトの時間らしい。"聞いたことないよそんなホテル。お寝坊さんもいるだろうさ"と思っていたら、やはりここはイスラム世界。朝の礼拝があるんで、皆早く起きるわけです。このホテルって、客層のメインがモロッコ人観光客で、外国人観光客なんてあまりいないみたいです。だから、チェックアウトもこんな時間なわけです。急いで荷物をまとめ、ホテルを後にしました。このホテル、なかなか住みごこちは良かったのだけれども、困ったことに部屋にコンセントがありませんでした(実は昨日の日記は今日書きました)。パソコンも使えませんし、もちろんデジカメの充電もできず。なので、ホテルを変更することにしました。ですが、ここで困りました。他のホテルにチェックインしようにも、ここモロッコの金が3DHくらいしかありません。ホテルのチェックインはおろか、コーヒーを飲むことさえできません。
まずは、近くの銀行に行って両替だな。そんなふうに思ったのでした。

 ここからが大変でした。バックパックかついで、6〜7Kmは歩いたことでしょう。なぜかって?トラベラーズチェックを受け付ける銀行がなかなか見つからず、ある銀行に行ったら、「**という銀行へ行け!」、**銀行に行ってみたら、「??銀行へ行け!」といった始末。政府が運営しているツーリストインフォメーションの場所を聞きつけ、そこに行って聞いてみたら、「++銀行に行け!」とのこと。「++銀行へ行ってみたら、うちではTCは扱っていないから、**銀行へ行け!」、そんな始末。結局、"BMCE"という銀行で両替できることがわかり、そこへ行ってみると、運良く銀行前に英語のできる銀行員がいました。
「すみません。ここの銀行でTCが両替できるって聞いたのですが…」
「今日の営業は終わったよ」
「えー、まだ11時半でしょう。午後は何時からですか?」
「今日の午後は営業しないよ。次の営業は明後日の朝からだよ」
「なんで今日の午後は営業しないのですか?今日は土曜でも休日でもなく、普通の火曜日じゃあないですか?」
「君は明日がなんの日か知っているか?」
多分、イスラム教の重要な日なのだろうな。「知らない」というのも、イスラム教の人々に対して失礼なんで、勘を働かせて、
「分かりますけれど、英語でなんというのか分かりません」
そんな風に答えていたのでした。
「明日はNew Yearだ!」
あぁ、そうか。明日は1月1日だった。この時点では、そんなことに気づきもしませんでした。だって、西洋なら、カウントダウンがあったり、町には垂れ幕やらが溢れていたりするんだろうけれども、ここには何もなし。イスラムの世界でも1月1日は休日になったりするんだ!。まぁ、そんなことは良いや。うーん、金が無い、困った。
「どこの銀行も、今日は午前11時半で営業が終わりですか?」
「あぁ、どこの銀行もそうだ」
「金が3DHしかないんですが、どこかで両替できるところを知りませんか?」
「全ての銀行が閉まっているだろうから、知らないなぁ。でも、君、カードは持っているか?だったらATMでの引き出しはできるぞ!」
そこで、しょうがなく最後の手段として残しておいた"みずほ銀行"のワールドキャッシュのカードを使うことにしました。このカードは便利なんだけれども、レートが悪かったり、手数料が引かれたりと、なかなか使いづらい。しかも私の口座には数万円しか入っていないため、"これは最後の手段"ということで残しておいたものでした。ATMで400DH(5千円くらい)を引き出し、なんとかお金を手に入れることができたのですが、最後の手段を使ってしまったことで少々がっくり。あー旅の資金ががんがん減っていく…どうしようか。

 お金を手に入れ、"コンセントのある"オテル・ツーリングの90DHの部屋にチェックインしたあとは、メディナ(城壁に囲まれた旧市街)やハッサン2世モスク(巨大なモスク、ここカサブランカの象徴)へと行ってきました。メディナ内はこまごました通りが連なり、こじんまりした商店や住宅が重なるように建ち、そこは買い物に忙しいモロッコ人のおばちゃんやら、観光客目当ての商売人でごった返していました。また喜捨(餞別)を求める人々も多く、付きまとわれて大変でした。ここメディナは、新市街とは全く雰囲気が異なります。通りは狭く、そして汚く、ごみが溢れています。メディナ内には"すえた"匂い、分かるでしょうか?あのすっぱいような匂いが充満していました(きらいじゃないですよ。こういう雰囲気)。人々も観光客慣れしていて、私に対して"たばこをくれ"だの"ありがとう、さようなら!"といった日本語が発せられることも多々ありました。軒を並べる商店を覗いてみると、靴、革製品を扱う商店が多いようでした。なかには、ナイキの服を着たおじさんが携帯電話を売っていたりするところもありました。ここメディナでもそうですが、カサブランカでは、古いものと新しいものがせめぎ合うように混在しています。「旧市街であるメディナと、FARと呼ばれる大通り周辺の近代的な街並み」、「イスラム教伝統の服を着たおじさんと、スーツを着こなすエリート風ビジネスマン」、「イスラムの服(黒い、顔とかも覆うやつ)を着た女性と、ジーンズ&Tシャツ姿の女性」、マクドナルド、携帯電話…。歴史ある都市にも、新しい文化、商品がどんどん入ってきて、人々の生活を変えつつあります。ここカサブランカでは、現在、ビジネスマンをはじめ、一般の若者の多くが携帯電話を持っています。Nokia(フィンランド)やサムソン(韓国)製の携帯が大ブレイク中です。さて、メディナの次に向かったハッサン2世モスクは、ただただ壮大で、そこは聖域たるに十分な厳かさを持った場所でした。海外沿いにそびえるこの建物は大西洋からの潮風を受け、遠くから見ると、砂漠の中に蜃気楼となって浮かび上がる城砦のような感じにも見えました。実際に近くまで寄ってみると、この建物は本当に巨大でした。高さは何メートルあるのでしょう?仏教徒(一応)の私がモスク内に入るのは憚られる気がしましたので、3、4時間、モスクの前でその姿を眺めていました。ここでは、私は本当に人気者?でした。冬なので観光客が少ない(ヨーロッパ系が数人いた。アジア系は俺1人)、また年末で巡礼者が多い?という時節柄、私には皆の視線が集中したのでした。話し掛けてくる人の数は数知れず。俺の後をついてくるこどもの数も相当数。このモスクの周辺には、巡礼者目当てと思われるポラロイドカメラ片手のおじさんカメラマンがたくさんいます。巡礼者の多くが、このおじさんカメラマンにお金を払い、モスクをバックに自分の写真をとってもらっているようでした。そんなおじさんカメラマンが、一目で東アジア系とわかる私にも声を掛けてきました。
「写真をとりましょう」
「いえ、私はカメラも持っていますので、結構です」
「いえいえ。あなたを写すというわけではなくて、あの家族があなたと一緒に写真をとりたがっているのです」
なぜか、知らない家族の真中に俺の姿が…。しかも私を含めての写真撮影は3家族も続きました。変なの。なんか有名人になった気分です。おそらく、それらの家族はモロッコの田舎町からの巡礼者で、東洋系の人間とかを見るのが初めてなのでしょうね。一応笑顔でいろんな人と話していた私に興味を持ってくれたのでしょう。なんか嬉しいや。

 さて、隣にある更地で、夕日に赤く染まったモスクと海を眺めていると、また10代と思われる1人の男の子が英語で話し掛けてきました。「夕日がきれいな今の時間、ちょっと一人にしてくれよ」なんてことも思ったのですが、怪訝そうな表情をするのも感じが悪いので、挨拶に応じて、世間話をはじめました。
「ここは、何故更地になっているか知っているかい?」
「いや、わかんないけれども」
「ここには、来年か再来年には巨大なショッピングセンターができるんだ。見て、目の前のメディナの一部も古い住宅が壊されて、新しい建物が出来ているだろう。あそこはホテルが建つみたいなんだ」

 イスラムの歴史、イスラムの人々の聖域としてのモスク、一方でこの聖域の隣にショッピングセンターが計画され、聖域の目の前には高級ホテルが完成しようとしています。こんなところにも、古いものと新しいもの、宗教的発展と経済的発展、いろいろなものの狭間にゆれるこの国の現状が見えたような気がしました。

 さて、現在夜の21時、ホテルにてこの日記を書いています。モスクからの帰り際、安そうなBarを発見したので、そこにでも行ってみようと思います。持参する金は100DH(約1200円)。これだけあれば、ビール4、5本はのめることでしょう。大晦日の夜だ。少し位贅沢したいからさ。

 以上。
 

- 本日の出費 -

レート : E1(ユーロ)=\125
レート : 10.5DH(ディラハム)=US$1=\120

- 移動費 -

From: To:
 

- 飲食費 -

ルビア (昼食) - チキンのカレー煮込みみたいなものにパンがついた定食 DH15
 

- 雑費 -

宿代 DH90
たばこ (Marlboro Lights) - (コスタリカでまとめ買いした)

更新地 : CASABLANCA ( MOROC )

前の日記へ 次の日記へ